リヒテルのインタビューをみて

リヒテルのインタビュー録画をみて

先日、NHK-BSでリヒテルのインタビュー録画が放送され、 その中で私が感銘し、同調したフレーズがあったので抜粋させていただきます。

■ リヒテル談 ■

アメリカでは自分で(コンサートで使用する)ピアノを選ばされた。
それが失敗だった。正しいピアノを選んだかどうか気になって…。 私は(自分で使用する)ピアノを選ばない、決して!
与えられたピアノを弾けばいい。
運に任せたほうが精神的にずっと楽だ。
ピアノを選ばされるのは音楽家にとって致命的だ。
重圧になるから私は調律師に任せている。
試し弾きなんて無駄だ、意味がない。
それは調律師の仕事。
聖ペテロのように
水の上でも歩けると信じることだ。
でないと沈んでしまう。
ピアノが好きじゃないのかと聞かれたとき私は答えたよ。
「ピアノより音楽の方が好きだ。」
実際ひどいピアノを使ってもいい演奏ができたこともある。

(問)ではピアノに何を求めますか?

ピアノよりも自分に求めるね。一番大事なのは、ごくごく弱いピアニシモがきれいに出せること。聴衆にもっとも強く訴えかけるのは、フォルテシモではなくピアニシモなんだ。

リヒテルが言う 『ごくごく弱いピアニシモが綺麗に出せるピアノ』 ここは技術者の腕の見せどころなのである。 改めて"ピアニシモ" の重要性を実感し、 弾き手と我々技術者との関係を意識したひと時でした。