表現力(1)
われわれ技術者は、限られた時間ではあるけれども『弾き手がイメージした通りに応えてくれるピアノ』となるよう目標を置いていつも仕事をしている。
たとえ小さな子供や初心者が弾くピアノでも、「タッチによってこんな風に音は変わるんだ」という発見をいつでもできる状態に調整しておかなければならないと考えている。
ピアノが弾きやすくなる(思い通りに応えてくれる)と、弾いていて楽しいしピアノに向かう時間も増えるし、曲にどんどん感情が入っていく。そうすると、ほんの少しのタッチや音色のバラツキにも気を使うようになるし、ますます音色やタッチにも敏感になってくる。
今までは先生に言われたとおりに、「ここは強く、ここは弱く、ここはだんだん強く・・・」。しかし、曲に感情が入っていくと、ひとつひとつの音の粒の形や色、流れまでも意識するようになる。
しっかり調整された楽器を使うことにより、表現力を養うことができるわけである。