表現力(3)-ピアニシモ-

表現力(3)-ピアニシモ-

ピアニシモがコントロールしにくい?


「鍵盤重量」は「重さ+摩擦力」からなり、相当に弾きこんでいくと消耗する部品などの影響から、この「摩擦力」が減少し、(鍵盤ごとにばらつきが生じ)ハンマー の動きをコントロールしにくくなる。 ピアノはハンマーが弦を打って音を出す。ハンマーの動きが速い状態で打弦すれば大きな音が出て、その逆は小さな音になる。このハンマーの動きをコントロールしながら演奏する。 「摩擦力」が減少するとハンマーの動きをコントロールしにくくなることは、摩擦の小さな氷上を滑るカーリングのストーンが、思い通りの位置に止まらないことを想像するとわかりやすい。しかも鍵盤ごとにばらつきがあるのでなおさらである。

ハンマーの状態は刻一刻と変化する

ピアニシモがコントロールしにくい原因のひとつにハンマーのコンディションがある。特にハンマーの先端部の変化は早い。ハンマー先端部のコンディションは演奏会ごとにばらついていくといっていいだろう。ピアニシモはもちろんフォルテも大きくばらついてくる。弾き心地に影響することは容易に理解できる。

それでもプロは上手く弾く?

鍵盤をゆっくり下ろすことができるようなテンポの遅い曲ならきっと上手く弾きこなすかもしれない。でも、ハンマーのコンディションのばらつきを修正し、摩擦力のばらつきを除去したあとのピアノは、小学生でさえも変化を理解できる。コンディションの悪いピアノのハンマーのスピードをきめ細かくコントロールすることはプロのピアニストでさえもかなり難しい。

我々技術者はどう調整するか?

この仕事を始めたばかりの頃は、メーカーが言う通りに、メーカーが推奨するマニュアルの数値にあわせて様々な調整項目を時間をかけて施す。いくら時間をかけても解決しないことに気づいたのはずっと後のことである。

1) 鍵盤重量(重さ+摩擦力)にバラツキが出てくると、同じタッチで弾いた時には当然、音量や音色にバラツキが生じる。

2) そして、ハンマーの状態は(特に先端部においては)演奏するごとに状態が変わっていく。特に使用頻度の高い中音域に変化が偏るので、他の音域とのバランスが崩れる。

この二点を念頭において短時間で調整していく。

リヒテルより調律師への注文

リヒテルがある調律師にこう注文したそうです。 「ピアニシモが上手く出せるピアノにしてくれ」と。 調律師は「ではフォルテはどうしますか?」とリヒテルに尋ねます。 リヒテルはこう答えたそうです「フォルテは私が出すからいい」と。