調律師が担う隠れた責任

音楽全般

多かれ少なかれ、ピアノのコンディションはピアニストのメンタルに影響を与えるもので、同じ会場、同じピアノ、だとしても調律師はある一定の責任を担うことになる。

「今日はいつものように弾けない」というピアニストの気持ちがこちらにも伝わってくる時間、それはこれまで何度も経験してきたが、なかなか慣れるものではない。

このコンディションなら間違いないであろうというところまで仕上げても、指摘されて初めて気づく場合もある。修正して解決することもあれば、ただ時間だけを失うこともある。

また、ピアノの位置や音響の変化の影響も考慮する。ピアノの音の大部分はあちこちの壁にぶつかって、間接的に自分の耳に戻ってくる。どう耳に届くかで弾き心地は大きく変わる。

弾きやす過ぎると弾き応えがないと感じることもある。

ピアニストとの呼吸も重要だ。何度も仕事を重ねるうちに、「この音域は同じ意見だね」と、一瞬で分かり合えることも多く、その場合、修正にも時間を要さない。

いずれにしても、調律師が一定の責任を担っていることは間違いないし、それは呼吸が合うとか合わないとかも関係ないし、古いピアノだからとか、温度も湿度も関係ない。ただ責任を持って結果を出さなければならない。